7人が本棚に入れています
本棚に追加
「えええ!?」
「…そんなに驚かれたらマジ傷つくんだけど」
額に青筋を浮かべながらぷーっ、と頬を膨らませる輝夜。
往人もつい言葉に出してしまったことを後悔しながら謝る。
「わ、悪かった…」
「べっつにー?」
とは言うもの、輝夜の言葉の端々にトゲがあるのを往人は敏感に感じ取っていた。
「まぁいいよ。なにせ往人くんだから」
「なにせってなんだよ、なにせって」
「べっつにー?」
しかし語ろうとしないのが輝夜クオリティー。
往人は輝夜のあまのじゃく振りにたじたじであった。
「まぁいいや。私もまだやらなきゃいけないことあるから、後でいい?」
「ああ」
輝夜は往人の返事を聞いてから、再び踵を返して一騎が戦っているであろう場所へ歩いてゆく。
その左手には再び輝夜の短剣…アソッド剣が握られていた。
「…まるで、正義の味方のようだな」
輝夜の剣を見ながら、誰に言うでもなく往人は呟いた。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
side Kazuki
くそっ、二人がかりはさすがにきつい。
輝夜に往人を任せて20分。俺は化け物じみた二人を相手に刀一本で相手していた。
「秘剣、斬鉄」
シッポ頭の重い一撃を受け流し、返しの一撃を振るう。
「ぐっ!」
「ハァ!」
かすり傷だがダメージを与える。だがそれ以上は紫頭の正確な射撃魔法が襲い掛かるからかわさざるを得ない。
「貰った!」
「やらせるか!」
隙を見て突破しようとした紫頭を素早く迎撃し、シッポ頭に注意を向けた。
しかし、シッポ頭は何かを念じているようで攻撃がなかった。
「食らえ!」
「ちぃ!」
残心は残したままで、紫頭にハイキックを放った。受け止めこそしたものの、紫頭は苦悶の表情を浮かべた。
いける―――
そう思ったが、体が本能的に回避行動を取った。
「なっ―――」
「………」
無言のまま、シッポ頭は大剣ではなく”大槍”を握り俺に突きを繰り出す。
鋭く、重い一撃は俺の頬を掠った。ピッといった音と共に鮮やかな血が噴き出る。
最初のコメントを投稿しよう!