7人が本棚に入れています
本棚に追加
朝。
小鳥のさえずりが聞こえるなんていうベタなシチュエーションだが、まぁそれは気にしてはいけない。
本来なら別にどうというわけではない朝、この部屋にはベッドの上に俺一人しかいないはずなのに、何故かカーテンが開け放たれる音が聞こえた。
「おはよう、一騎」
「ああ…おはよ、由真」
声の主は由真か。湊凪の山吹色を基調にした制服をぴっちり着こなしている。
「もう07:00。早くごはん食べないと遅刻」
「いや、十分に間に合うが…それに朝飯は昨日握って置いてる「ちゃんとチンして置いてある」そうか、ありがと」
由真が指差した先には、確かに俺が昨日炊き残しのおにぎりがあった。
俺は起き上がっておにぎりのラッピングを剥ぐと、ひとつ口にほうり込む。
「一騎。私も」
「ああ、好きなだけつまめ」
由真もそのうちのひとつを取り、ほおばり始める。少し喜色のある顔をされたら、作った甲斐があったというものだ。
「さて…」
俺はロッカーにかけてあるワイシャツを取り出し、それを羽織りながら由真に聞く。
「…なんで俺の部屋にいるんだ?」
「…………」
「オッケー。俺が悪かったからそのソードブレイカーを撃とうとするのは止めてくれないか」
「…一騎は、物覚えが悪い」
少々怒りは残るが、なんとか由真は許してくれた。
そうだそうだ、昨日は佳奈多のめんどくさい説教を聞いたからしんどくて、由真に飯を作ってもらったんだ。
ちなみに由真の飯は美味すぎず不味すぎず、まずまず。しかし俺の方が美味いのが作れる。
だけど女の子に作ってもらうだけで飯が何倍も美味く感じられる気持ちは分かるだろ?
さて…今日はどのように脱走するかな。
「今日もフケる気?」
「まさか。たまには授業出なきゃまずいだろ?」
「そう。なら、フケたら制裁」
「ふぅん。どんな制裁だ?」
「昨日、一騎に初めてを強引に奪われたって全校放送する」
「命に代えても出席しよう」
そんな放送をされた暁には一生彼女どころか友達すら出来ない。
「…良かった。一騎が落ちこぼれないで済む」
「その割にはすごく残念そうだな」
「…??」
由真の振る舞いが本気なのかネタなのかたまに分からなくなるのは俺だけなのだろうか。
最初のコメントを投稿しよう!