FATE1-2 守護者の資格

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「馬鹿がいたから蹴っただけだ」 「そんな日生…たとえ事実だったとしてもそれは酷いよ」 「お前も十分に酷いこと吐いたけどな」 「ゴハァ!」 「ん?また馬鹿が叫んだか?」 日生はあたりをキョロキョロと見渡す。多分俺が弾いたハルバードが突き刺さったんだろうな。 まぁゾンビだから痛覚ないらしいし、ほっといてもいいか。 「…早くしないと遅刻」 「あ、本当だ」 由真に言われて時間を確認すると、確かにあと10分くらいでHRが始まる。 「ほら、さっさと行くぞ」 「うん」 「わかった」 「あ、待ってよっ」 三人を急かして、俺は教室へと急ぐ。俺はその道中、なにか忘れているような気がしたが思い出せなかった。 「ま…まて、俺を忘れていくな…がふっ」 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 「よし、では授業を始めるぞ」 HRにはなんとか間に合い、今から一限目の授業が始まろうとしていた。確か…歴史か。明治の話だったっけ。 うちの学校は二年かけて地歴を並行して進めるから、高2の時期でまだここなのである。 「このように、明治時代には富国強兵政策によって日本は列強と肩を並べるために……」 「………」 だるい。無茶苦茶だるい。 地歴公民は俺が最も得意とする学科なので、授業を聞いたことは全部知り得ていることなのである。 だから…だるい。 俺は高尚に歴史を語る教師の話を聞き流し、俺は窓の外を見やる。 (あ…佳奈多) 外では体育の授業でサッカーをしていたらしく、今まさに佳奈多がパス回しでボールを受けたところだ。 (俺なら左に抜いてシュートだな) そんなことを考えていたら、本当に佳奈多は左に抜いてシュートを撃った。 キーパーの反応がよかったからシュートは止められたが、佳奈多は非常に悔しそうにしている。 と、ふと佳奈多と視線が合ってしまった。 (おいおい、そんなめねつけるな) 佳奈多は俺をひとしきり睨んだ後、そのままプレーに戻っていった。なんてやつだ。 「では桜井くん。この西洋に合わせていく日本に反旗を翻したのは誰か答えたまえ」 「西郷隆盛なんじゃないですか」 「ふむ…聞いていないようで聞いていますね、君は」 聞いてないけどな。 それきり興味が失せたようで、先生は別の眠そうにしていた生徒に質問をぶつけた。
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