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なんか一昨日の一件から、なにやら俺の周りがざわつきはじめた気がしてならない。賑やか過ぎるのが苦手な俺としては、もう少し慎ましくいたい。
「って桜井くん。なんでそんなにしんどそうな顔を?」
「ほっとけ」
「でも僕はあまりほっとけないな」
そう言う裕一の瞳は確かに、人を心配している瞳だった。
だけど、特に困らない以上裕一の手を煩わせたくない。
「大丈夫だ。構わない」
「そっか…」
さすがにそれ以上の詮索はして来なかった。
その直後、カラカラと弱々しく教室の扉を開ける奴がいた。
「あら往人くん…ってどうしてそんなにやつれているのかな?」
「ほっといてくれ…」
ムンクの叫びに描かれた人みたいにげっそりした顔の往人はハルバードを杖に、プルプルしながらなんとか自分の机に座り込んだ。
「また日の下に出ちまったか、往人」
「…正確には、放り出された、だがな…」
そう言って俺と日生を順番に睨んだ。とんだとばっちりである。
「まったく…おかげで一限目遅れたじゃないか」
「い、往人が勉強の心配だと!?」
「ちょっとはするわ!」
「でも僕は往人がちゃんと勉強している様子をあまり見た覚えはないなぁ」
「俺は陰の秀才なんだ」
「え、私はてっきり”勉強なんてクソクラエ!青春ってのは親に言えないような恋愛だろーがjk”な人だと思ったんだけど」
「…………」
「おいおい、往人…声を殺してさめざめと泣くな」
「俺の人物評って…そんなんなのか…」
輝夜の話を聞く限りは俺は正しいと思う。
「あははっ、冗談だよ♪」
「……しくしく「男がメソメソするなっ、ボケェェェェ!!(ドカッ」ゲハァァァァァァ!(ガシャーン」
「「「往人ぉぉぉぉぉ!!」」」
往人の態度にブチギレした日生が思い切り蹴り飛ばす。案の定、往人は窓を破って外へ放り出された。死にはしないと…信じたい。
「おーい、授業はじめ…ってまた天ヶ瀬が破ったのか?蹴落とされたのは大抵明科か神前だから問題ないが…程々にな?」
日常なのかよ。しかも明科もあんなアバンギャルドな体験してるのかよ。
そんなツッコミをよそに、何食わぬ顔で先生は授業を始めるのだった。
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