FATE1-1 湊凪温泉アタック

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夢を見た。 それは、誰かが助けを求めてくる夢。 誰が俺に対して求めているのは分からない。だが…ただ必死に俺に呼び掛けていた。 ただ、助けてほしいと。 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 「…?」 ふと、目が覚めた俺は周りを見渡してみる。 いつもの観葉植物。 やたら古い文献が並んだ本棚。 そして応接用の机とソファ。 うむ、いつもの執行部室だな。下を見てみると、ちょっとした書類。傍に置かれていた時計を見たら夕暮れ時であったため、書類を整理している内にうたた寝していたらしい。 「んー…っ」 軽く伸びをし、体を軽く解した。縮みきった筋肉が伸ばされる感覚が心地好い。 「よし、さっさと書類を整理するか」 そう思ったが早し、俺は残りの書類を片付ける作業に入った。 …そうだな、俺の紹介をしておこう。 俺は桜井一騎。…そこ、やたら見た名前だと思うな。気のせいだ。 ここ、東京に設立された『巨大学園都市』の中にある学校の一つ、湊凪学園に通う高校生だ。 無論、ただの高校生ではない。むしろ、この学園都市自体がただの学園都市ではないのだ。 この学園都市は、7年前に降り注いだ謎の流星群が異星人によるものだと予想した学者が提唱して、『外的驚異に対する対抗力の育成』を旗印に世界中から異能の力を持つ少年少女が集められた。 まぁこのご時世だ、そんな力を持つ人間はそこそこ居るらしい。 だから、ここまで学園都市が大きくなったのだった。 それゆえに、力を誇示するための抗争は勃発する。俺は湊凪学園内の勢力抗争を鎮圧するための執行部の長の肩書きを背負って日夜飽きもせず学業との両立を図っているわけだ。 この書類も、その内部抗争に関する資料である。 「………」 やはり春だからか、5月に入ってから戦闘の数が段々増えてきている。5月ってむしろ減る時期だよな? 「…特にゲリラ的な戦闘が多い。うちの人間もちょいちょいやられてるな」 あまりボコボコにされるようじゃ、めんどくさいのに俺が出撃しなければいけない羽目になる。それだけは勘弁被りたいところだ。
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