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私は、何か聞いちゃいけないものを聞いたようで、
気づけば、物陰に隠れていた。
「うん。 じゃあまた。」
電話は終わったようだ。
あ…
やばい。
泣けてきた…………
「っ……
うぅっ………」
「え…
さっちゃん…?」
声を殺していたつもりだったが、バレてしまったようだ。
私は必死で涙をこらえた。
「あっ、ごめん。
なんか話し中だったみたいだっから…」
あ。やばい。また泣けてきた…
早くお弁当を渡して帰らないと…
「はい。お弁当…
忘れてたよ…?」
私はお弁当を無造作に幸人に渡して、
顔を見られないように下を向いて走った…
私は玄関に座り込み、自分でもビックリするぐらいの勢いで泣いた。
そりゃそうだよね…
幸人はイケメンだし、性格もいいし、モテるもん…
前から分かってたことじゃん…………
― でも悔しかった。
自分以外の女に「好き」なんていってるところ見てしまったら、
本当に悔しかった。
ダッダッダッダ
「さっちゃん!!!!」
「え…?ゆ…き……?」
何やってんの………
早く行かないと会社に遅刻しちゃうじゃない…
「さっちゃん…
なんで泣いてんだよ…」
そういって幸人は、私を抱き締めた…
「泣いてないし…っ
早く会社行きな…?」
「嫌だ。
泣いてるさっちゃん置いて会社なんて行けない…」
エミちゃんって確か、幸人の会社の人だ…
こんな演技要らないから、早くエミちゃんの所に行きなよ…
こんな愛想の無い女なんて置いて、スタイル抜群で可愛いエミちゃんの所に行けばいいじゃん…
「幸人…
私泣いてないから……
さっき玄関はいるとき転んだだけだから…。」
と、思いっきり涙声で嘘をついた…
「なぁ。さっちゃん…
もしかして、さっきの電話、聞いてた…?」
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