モーツァルトの時代

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タバコに火をつけ、浮かんだ言葉を整理した。 「昔に生きた人間がそんなに偉いのかよ?」 …こう思うが、自分が歌う「コシ・ファン・トゥッテ」は、モーツァルトが、つまり今より200年以上昔の人間が作曲したオペラだ。 そのモーツァルトは、今でも「楽聖」として語り継がれている。 日本だって、「馬の耳に念仏」とか「猫に小判」などといった諺が学校の教材として受け継がれている。 数々の名曲を送り出しているのも「昔に生きた人間」なのである。 心に残る名曲は、いつだって昔の人が先取りしている。いや、最近の若いやつは心に残る名曲を作り出す何かが欠けてしまったのかも知れない。 だからこそ知りたい。 音符というものを作り出した最初の人間を。 五線譜におたまじゃくしのような音符を書こうと思った人。それに言葉をつけようと思った人。 そもそも、ト音記号やヘ音記号、一般的に知られていないが、ハ音記号なんてのもある。 ハ音記号に関しては、パソコンや携帯の文字変換でも出てくるものは乏しい。僕たちのような音楽家からみれば非常に嘆かわしい。
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