モーツァルトの時代

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声楽家はほぼ100パーセント、ハ音記号は使わないが、こういった文章を書くにあたってはなんだか音楽を軽く見られていると思うのだ。 いちいち一文字ずつ変換しなきゃならない俺の身にもなってみよ!と携帯の会社にクレームの電話をしてやりたくなるようなもどかしさが僕にはある。 この文字変換を作った人は恐らく、ト音記号やヘ音記号の大元を知らないのであろう。 ト音記号は、「ソ」の音を表すのだ。「ソ」をアルファベット表記にすると「G」になる。それを小文字にすると「g」だが、ト音記号はこれをレタリング(飾り文字)にしたものなのだ。僕もこれは大学時代に習ったものなのだが、目から鱗が落ちる思いをした。 ヘ音記号についても同じである。 これを最初に考えた人はすごく偉いと思うのだ。どれくらいかというと、あの気持ちの悪いナマコを最初に食した人間ほどの偉さであると思う。 しかし、その偉い人だって、楽聖モーツァルトより100年以上昔の人が考えたのだから驚きである。 ただ、モーツァルトですら生前はほとんど人気のない音楽家だったのだ。 恐らく音符を発明した人に限りなく近い人間には、あのモーツァルトも「最近の若いやつ」のカテゴリーにしか属さなかったのであろう。 とにかく、この楽譜という概念を切り開いた人間には「これがスゴイ!」という道筋を決める権利があったのだろう。
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