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今日は長州藩直々に視察に来る日。
「・・・何もここまでしなくても」
一人部屋で待機をしている由南が不機嫌なのには理由があった。
『由南は本邸の奥の間にいろ』
高杉がそう言ったのは今朝早く。
奇兵隊は現在、白石正一郎の家を借りうけ屯所としていた。
正一郎は廻船問屋を営んでいて、長州では豪商であった。
そこの広い土地に屯所として奇兵隊は住んでいたのだ。
『正一郎、由南を本邸から出すなよ』
『わかりましたよ。高杉さん、任せてください』
普段から本邸に住んでいる正一郎に、高杉は頼み、一日由南を本邸に置いておくことにしたのだ。
それはもちろん、父親と会わせないために。
「何もここまでしなくても・・・確かに本邸には視察は来ないだろうけど」
不貞腐れる由南の部屋に控えめに障子を叩く音が響いた。
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