二話

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「窮屈な思いをさせてしまい、すみません」 障子をあけたのは家主である、正一郎であった。 「正一郎さん!気にしないでください。晋作たちが勝手を言ったんだから」 ふわりと笑う由南に、正一郎はお茶と団子を差し出した。 「わざわざありがとうございます」 それを受け取ると、由南はため息をついた。 「大丈夫かなぁ。稔麿」 由南の心配の種はもっぱら稔麿の事であった。 「キレたりしなきゃいいんだけど」 何しろ血の気の多い奇兵隊幹部たち。 訓練をしているところを視察すると言ったって、ただでは済まない事くらい、わかっていた。 「大丈夫ですよ、由南さん」 正一郎が苦笑いすると、由南も同じように返した。 「白石様!ここにおられましたか!」 勢いよく飛びこんできたのは、廻船問屋の水夫であった。 「どうかしたのですか?」 「奇兵隊の方々が・・・!」 水夫の焦った顔を見て、由南はやったか、と小さく呟いた。 「正一郎さん、私みんなのところに行きます」 「しかし・・・」 正一郎は引きとめようとしたが、由南はそれを聞かず、本邸を飛び出していった。 「・・・血の気が多いのは、由南さんも同じですね。私も出向きますから、ここをよろしくお願いします」 正一郎も水夫に告げると、着物を正し、奇兵隊の屯所の方へ向って言った。 .
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