狐の月

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「ハァ…ハァ…」 意識がもうろうとする そろそろ息をするのも辛くなってきていた 『…お前……』 夫は私に寄り添い、小さく声をかける 私はもうすぐこの世からいなくなる 死が近づいている事 わかってる…わかってるけど… あなたを置いて行くなんて… 「あ…あなた…」 『なんだい?どうした?』 「ごめん…なさい…、ハァ…あなたを……置いて行って…しま…う…なんて……ハァ……」 『オレの事なんか…心配するな』 それだけが心残りなの… 病気にならなければ…あなたともっと生きられた…… 子供だって出来たかもしれない たくさんケンカしたり、たくさん笑ったり、泣いたりできたかもしれない そんな些細な事もできないで死んじゃうなんて…………
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