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「ん…………?」
縛られている感覚があり、目が開くと案の定、舞も椅子に縛られ動けない。
前を見ると犯人と思われる男が前後に2人立っていて、後ろの男の腕にはナイフが握られている。
舞の目が覚めた事に気付いた、前にいる男が口を開く。
「起きたか……。よくここに1人で来る気になったな。普通なら怖がって来ないところだろうが。捕まるとは思わなかったのか」
言われて気づく舞は迂闊だったと反省する。
――だが後悔はしない!
「仕方無いでしょ。急いでたんだから」
「へぇ…不利な割には威勢がいいな。怖さは無いのか?」
「怖いけど、怯えてたって何にもならないし、なんか大丈夫だって思うから」
詩織を安心させるため、少し強気に出ていると、後ろにいた男がナイフを振りつつ喋り始めた。
「大丈夫ぅ!? 変なこと言うヤツだな。自分の立場ってモンを分かってんのかぁ!?」
「助けも呼ばず、自分一人で大丈夫だと。ニュースを騒がせた俺たちもなめられたもんだな」
――助け? あっ!渚に連絡するの忘れてた!
更なる失敗に気付いた舞。しかし怯んでいてはいけないと気分を立て直す。
「あなた達みたいな人達は絶対に捕まるって相場は決まってるんだから!」
――ふん!言ってやった!
舞はちょっとした優越感を感じた。
「口も動かないようにしておけば良かったな…。まぁ俺達にはお前は必要ない。大切な友達の横で死ねるんだから感謝しろよ」
ドラマなどで見たことのある、犯人そのままの言い回し。ナイフを向けられ絶体絶命の状況。ドラマなら逆転のチャンスが訪れる。
だがそれは舞の目の前で起こっている現実の出来事。ただの女子高生に抗う術は何もない。
――現実ってこんなに怖かったんだ……。
死を目前に色々な人の顔が浮かぶ。
――お母さん…愛…詩織…瞬…。
――……渚ッ!!
「うわぁぁっ!」
大きな音と同時に木の扉と、別の部屋に居たであろう、犯人の1人が吹き飛ばされてきた。
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