一つ目の出逢い

2/16
前へ
/25ページ
次へ
転校生が来る。 朝の自由時間、15、6歳の生徒達が登校し、1日の準備をする中、そんな囁かな噂が山風 舞(やまかぜ まい)のクラス、1年3組で流れていた。 その噂の中には、家一軒が蹴りだけで倒壊した、サメと闘って屈伏させた、などと言うものがあった。 噂は、色々と尾鰭が付くものだとして舞は理解しようとしていた。 チャイムが鳴り、散り散りになっていた生徒達が自らの定位置へと着く。 入口の扉が横へ滑りながら開き、担任である中年男性が気だるい歩調で教壇に向かう。 それに続き、開いたままの扉から青髪を肩まで伸ばした元気そうな少女が入って来た。 担任とのギャップからか人よりテンションが高く感じられる。 「こんにちわ!!」 予想通りの大声が、ひそひそと騒いでいた生徒達を黙らせ、存在感を示した。 「ウチはフットサルやってんねん!みんな仲ようしてな!」 自己紹介が終わり、暫くの沈黙。 そこから生まれるのは静寂しかなかった。 「…名前、名前」 教壇の端で小型の椅子に座っていた担任が、口だけを動かして促す。 「えっ!? …あっ、そやったな。ウチは七海 渚(ななみ なぎさ)や。よろしく~!」 「ついでに今、席替えをするぞ~」 唐突に聞かされた席替えに生徒達は賛否両論の声を上げるが、担任は意外と頑固であり、こうなった場合、誰がなんと言おうと担任の意思は変わらない。 そして席替えは短い時間で素早く進み、舞の席と渚の席は隣同士になった。 「なぁ名前、聞かしてーや」 渚は少し席をはみ出しながら舞に近寄り、満面の笑みで話しかけてくる。 「私…? 私は山風 舞だよ」 「舞~、ウチ昨日引っ越して来たばっかやねん。街案内してくれへん?」 突然の提案にも関わらず舞はすんなりとその提案を受け入れた。 「いいよ、予定ないしね」 「よし決まりっ! じゃあ放課後な!」 約束を交わしたタイミングで1時限の始まりをチャイムが知らせた。
/25ページ

最初のコメントを投稿しよう!

8人が本棚に入れています
本棚に追加