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「その緑の宝石が付いた指輪、綺麗やな~! 誰かからのプレゼントなん?」
「そうじゃないけど、私にとって大切な指輪よ」
休日の朝、渚は舞の家の台所で舞の母親と話している。
舞は二人の会話をリビングのソファに座って聞いていた。
「舞はこーゆーの、持ってないん?」
「持ってる訳無いって。それにお母さんのは子どもの頃から持ってるらしいから」
「ウソぉ!? もしかしてお嬢様!?」
「ふふ……かもしれないわね。でも、本当のお嬢様は詩織ちゃんだけどね」
「ウソぉ!? 詩織がお嬢様ぁ!?」
―――――
詩織を見かけた日から3日。
3日間で渚はすっかり家族に馴染んでいた。
「楓さん、愛ちゃんは?」
楓と言うのは舞の母親、愛は3つ下、つまり13歳の妹。
「おつかいよ。途中でお菓子とか買って無いかしら…。心配だわ~(笑)」
楓の口調から心から楽しんでいる雰囲気が感じられる。
「…何が“心配だわ~(笑)”よ。もう子供じゃないんだからさ、そんな事するわけないし」
気付かぬ内に扉の場所で仁王立ちをしていた愛が、冷ややかな声で言い返す。
「何買うて来たん? お菓子?」
「なぎ姉ちゃんも乗らないでよ……。晩ご飯だよ。カレーの材料」
左手に提げていた、じゃが芋や肉が入ったビニール袋を突き出す。
「渚ちゃんも食べていく?」
「もちろん!」
自然な話の流れで、今日の昼食は4人での食事となった。
「あら…。人参が足りないわね。どうしましょう…」
――愛、ワザとだろうな……。
「なら行って来たるで! ほら舞、行こ!」
渚は座っている舞を立ち上がらせようと手を掴み、引く。
「えっ…私も!?」
「そらそやろ。スーパーの場所知らんし」
――ですよね……。
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