8人が本棚に入れています
本棚に追加
徒歩10分で行けるスーパーからの帰り道、ビニール袋はカレー用の人参だけではない膨らみかたをしていた。
その中にはハチミツ、牛乳、納豆、麻婆豆腐、ほうれん草が入っている。
渚が言うにはこれが絶対必要なのだそうだ。
菠薐草だけは舞の独断だが。
「納豆カレーはまだわかるけど、……麻婆豆腐?」
「知らん? テイ〇ズの名物料理。舞こそ、ほうれん草は何に使うん?」
「カレーに入れたらグリーンカレーになるでしょ」
渚の問いに真顔で答える舞。
「ならへんから!! グリーンカレーペーストとか、ココナッツミルクとかいるし!!」
「……、……分かってるよ~」
――さぁ!なんか話題、話題……
と思う舞の視界には既に自宅が見えていた。
ブロック塀に取り付けられた小さな門を通り、庭に立ち入ると、小さな何かが靴に当たる感覚があった。
舞はその小さな何かを拾い上げて、手のひらに乗せ確認する。
――指輪? でもお母さんのと形違うし……
ふと舞が横を見ると、渚も同じものを拾い、同じ動作をしていた。
2人が顔を合わせ疑問の表情を見せ合っていると、玄関の扉が開き、楓が2人に声をかける。
「そんな所でなにやってるの? 早く中に入って! 愛も待ってるから」
――愛が人参を待ってたとは思えないけど。
促されるまま2人は指輪をポケットに入れ、カレーの準備に取りかかった。
最初のコメントを投稿しよう!