壱ノ話【水】

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「お前は昔から考えるより行動だからな…」 「その度に、いつも兄上に制されますから」  自嘲気味に笑った由良を見て、吉良はそれ以上、特に咎める事は無かった。 「しかし、体調が回復次第、一度香苗さんと話をしてみようと思う」 「そうですね、香苗さん。何か知っていそうですし」  そこまで言うと、吉良はきびすを返し、 「まぁ、特にここでは手がかりは無さそうだ。移動する」  そして、二人は千都の家の戸を開けた時、 「あ…」 目の前には香苗が立って居た。 「香苗さん、お体は大丈夫ですか?」 「あぁ…熱は引いた。すまんな、医者まで呼んでもらって…」  見た感じ本調子じゃなさそうだが、それだけ言うと香苗は家の中に入って来た。 「まだ顔色が優れない。寝ていた方がよろしいのでは」  吉良も声をかけるが、香苗は首を横に振って、 「実は今日、すぐそこの隣町に用があってなぁ…ちょいと千都と行ってくる」 「そんな、今日でないといけないのですか?」 「あぁ…それに、ゆっくり眠って熱も本当に引いたんだぁ。それに、すぐ帰って来るから、霊媒士さん」  由良と吉良は顔を見合わせるが、ただ、着々と香苗の支度だけが進んでいった。
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