壱ノ話【水】

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「あの霊も、相当力を溜めた死鬼となっていたな」  千都の家の、水の溜まり場に居る二人。 「…最初に来た時、悪意は感じられませんでした。案山子によると、様子を見に近付いた案山子に、霊は身の危険を感じ、敵意を剥き出して死鬼となったそうです」 「だったら、俺達が余計な事をしたのかもしれんな。だが、何の害も無いただの霊であったとしても、この世にいる限り除霊せねばいかん」  はぁ…と額を押さえながら溜め息を吐いた。  そんな吉良を由良は案じる。  そして、 「これは何の水でしょうね」 「さぁな。てっきり溺死者か水葬時の水かと思っていたが、分からん」  吉良の方はお手上げの様で、座り込んで太股に肘を着き、頬杖をついた。  しかし、由良はどうしてもこの謎の水が気になって仕方なかった。  何か、何か手がかりに…そう思い、考え込んでいる内に由良は、指先をその水に浸け、口元に近付けた。 「!」 「よせ。安易な事をするな」  座り込んでいた吉良が、由良の腕を掴んで制した。  そこで由良もハッとなり、自分のしようとした事が理解出来た。 「…ごめんなさい」  確かに、好奇心で舐めようとした自分を反省した。
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