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「あの霊も、相当力を溜めた死鬼となっていたな」
千都の家の、水の溜まり場に居る二人。
「…最初に来た時、悪意は感じられませんでした。案山子によると、様子を見に近付いた案山子に、霊は身の危険を感じ、敵意を剥き出して死鬼となったそうです」
「だったら、俺達が余計な事をしたのかもしれんな。だが、何の害も無いただの霊であったとしても、この世にいる限り除霊せねばいかん」
はぁ…と額を押さえながら溜め息を吐いた。
そんな吉良を由良は案じる。
そして、
「これは何の水でしょうね」
「さぁな。てっきり溺死者か水葬時の水かと思っていたが、分からん」
吉良の方はお手上げの様で、座り込んで太股に肘を着き、頬杖をついた。
しかし、由良はどうしてもこの謎の水が気になって仕方なかった。
何か、何か手がかりに…そう思い、考え込んでいる内に由良は、指先をその水に浸け、口元に近付けた。
「!」
「よせ。安易な事をするな」
座り込んでいた吉良が、由良の腕を掴んで制した。
そこで由良もハッとなり、自分のしようとした事が理解出来た。
「…ごめんなさい」
確かに、好奇心で舐めようとした自分を反省した。
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