壱ノ話【水】

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 吉良は白き炎を扱う。  普段は呪符に炎を着火することで、敵の動きを止めてから炎で浄化するが、本来、吉良は体中どこでも炎を発することが出来る。  そして、吉良曰く、炎を扱うと水分と共に、かなりの糖分が欲しくなるらしい。  由良には真似する事が出来ないので、本当かどうかは分からないが。  更に、行動派の由良とは違って、考え込む吉良は何にせよ、石橋を叩きまくる、かなりの慎重派である。  なので、偏頭痛もしばしば。  そんな吉良にとって甘い物は必要不可欠らしい。  でも、由良にするとそんな兄が子供のようで可愛らしいなんて思う反面、それでも強くて冷静な兄が何より頼もしい。 「甘酒も飲みたいな…」  何て呟いている兄の斜め後ろで、由良はくすりと笑った。  甘味処に着いて一息している二人の元に、若い女性が生まれたばかりの赤子を抱いてやって来た。 「やぁ、吉良さんと由良さん。よう家に来てくれてるみたいで、嬉しいですわぁ」 「あっ、甘味処の奥さんですか」
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