壱ノ話【水】

26/44
前へ
/524ページ
次へ
「あぁ、いつも旦那がやってて、おらは今産まれたなりの赤子が居るんでねぇ…でも、章吉の一件を解決したお二人さんに会いたくて出て来ちまったぁ」  あははと笑う女性の腕の中で、産まれてすぐの性別も分からないような赤子が眠っていた。 「あら、可愛らしい」 「名は何という?」  吉良が訪ねると女性は嬉しそうに笑みを浮かべて、 「まだなんだぁ。実はお二人さんに付けてもらおうと思ってなぁ」 「あら、そんな…私達が付けるなんて…責任重大ですね」 「いいや、この子もお二人さんみたいに綺麗で強い子に育ってほしくてなぁ。良ければお願いします。ちなみに、女子ですわぁ」  頼み込む女性に、ならばと二人は思案して、同時に口を開いた。 「実(みのり)は、どうだ」 「幸(ゆき)はどうですか?」  同時に言った二人はお互い目を合わせた。 「あら…同時でしたわね」 「俺の方が若干早かったぞ、由良」 「いやぁ、どちらも素敵なお名前だぁ…そうだぁ、実幸(みゆき)!どちらも頂きます!」 「実幸、良いですね」 「うむ、悪くないな」  眠っている赤子が起きるんじゃないかというくらい、嬉しそうにはしゃぐ女性。
/524ページ

最初のコメントを投稿しよう!

409人が本棚に入れています
本棚に追加