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「おっ母!あれ見てくんろ!船だぁ」
千都は香苗の袖を引っ張って、海に浮かぶ大きな船を指さした。
「あんなでけぇの初めてだぁ!異国にも行けそうだなぁ」
はしゃぐ千都に香苗は表情を変えず、
「千都、おら達あれに乗るんだぁ」
と、千都に言った。
千都は目を丸くして、
「えっ!あれに乗れるんかぁ!」
「そうさぁ」
「わぁ、信じられんなぁ!嬉しいなぁ」
くるくると走り回って、時々飛び跳ねて喜ぶ。
「おっ母、何時くらい乗るんだぁ?夕方には間に合うかなぁ」
「…千都、実はなぁ…」
ザバァッ!!
海から大きな水しぶきが上がった。
千都と香苗はハッと海岸を振り返った。
「な、何だ…」
海水がまるで龍のようにうねり、千都と香苗を囲んだ。
「ち、千都、こっちへ!」
香苗は千都を自分の近くに抱き寄せた。
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