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「か、案山子さんが居るんか…?」
千都はキョロキョロと辺りを見渡すが特に返事も無く、案山子の姿も見えなかった。
そこで千都はあっと懐に手を入れた。
「おっちゃん…!」
握り締めて取り出したお守り。
「…おっ…お…」
すると吹き飛んだ女は操り人形のようにギギギとぎこちなく起き上がる。
「お…おらぁの…」
ビクッと怯えて、千都は香苗の元に走った。
それを追うように、ビチャッ…ビチャッ…と水音を立てながら、女は足を引きずり近付いて来た。
「お、おっ母…おっちゃんのお守りがあれば、大丈夫…大丈夫だぁ」
千都と香苗は身を寄せあって動けずに居た。
お守りがあれば大丈夫だ、という気持ちはあったが、目の前のおぞましい光景に足はガクガクと震えた。
捕まったら、殺されるのだろうか…香苗と千都は、徐々に近付いて来る女に対する恐怖心で支配されていた。
「た…助けて…」
真っ昼間だというのに、周りには人の姿が見えない。
居るのは人でないものだけ。
ビチャ、ビチャ…絶え間なく響く水音。
女の通った所には水溜まりが出来上がっていく。
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