409人が本棚に入れています
本棚に追加
そして、吉良は首にかけている数珠を取り、呪言を唱え始めた。
すると、ボッと呪符に白い炎が灯り、段々美代へと攻め寄っていた。
「や、やめ…ろぉ、熱い…熱い」
その時、
「待ってくんろ!」
ちょこんと千都が吉良の前に出た。
「…何だ」
吉良は呪言を止めた。
「ちょっとだけ…待ってくんろ」
もう一度千都がそう言うと、千都は美代に向いた。
「…おっ母、私を産んでくれてありがとう」
千都はニコリと笑みを浮かべた。
そして、美代と香苗を交互に見て、
「でも、おらにとってはどっちもおっ母だ。ここまで、おらを育ててくれたんだ。おらは幸せだよ。だから、もうおっ母…おっ母に危害を加えないでくれ」
美代はただ、千都の言葉に耳を傾けていた。
ジッと動かずに、表情は先程よりも心なしか穏やかに見える。
「いいえ、違います」
由良が千都に優しく話した。
「美代さんは危害を加えようなんて思っていませんよ」
最初のコメントを投稿しよう!