零ノ話

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 しかし、由良は何一つ動じなかった。  自分が狙われているというのに、由良は何をするでなく、ただ鬼の形相でこちらに向かって来る女を見つめた。  グングンと容易に近付く女は、由良を確実に引き裂けると確信を持った。  由良に女の手が触れようとした時だった。    パンッ!    女に衝撃が走ったかと思うと、気付けば女は勢いよく吹っ飛んだ。 「な、何だ…」  宙に舞っている間も、一体何が起こったのか思い返せど、女には分からない。  そして、そのまま全体重を乗せて地に叩きつけられた。  痛みなんか無く、ただ、何が起こったのか分からずに、吹っ飛んだ衝撃で肉片が辺りに散っている様を女は見つめた。 「貴女では私に勝てません」  頭上から鈴を転がしたような澄んだ声が聞こえた。 「私には、頼もしい護衛が居ますからね」  その声はそう付け加えた。
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