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「そ、そんな…おらを恨んでいるはずだぁ。そうだろ、美代…」
「いいえ、美代さんは私達が来るまで香苗さんに何かしましたか?」
「いや…」
「ずっと、見守っていたのです。千都ちゃんも、香苗さんも」
そこまで言って、由良は美代から流れ出た水をなぞり、
「その証拠に、水。これは、羊水です。千都ちゃんを産んだ時の気持ちが強くて、常に羊水が滴っていたようです。産婆のお母さんの手伝いをしていた香苗さんなら、もしかして気付いていたのでは?」
「成る程、羊水だったか」
吉良も納得して、そこらに溜まっている羊水を見た。
「美代さんはどうしても一緒に居たかったのです。ずっと、千都ちゃんが大人になってもすぐ側に居たかったのです。ただ、私達が現れて、美代さんは自分が除霊されてしまう、千都ちゃん達から引き離されてしまうと身の危険を感じ、世に流れる邪な力を吸収し死鬼となりました」
「美代…そうだったのかぁ…そうだったのかぁっ…」
香苗の頬に一筋の涙が伝った。
そして、堰を切ったように止めどなく涙が溢れ、頬を伝っては地を濡らしていった。
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