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その言葉を聞いて、女はやっと、「あぁ、この小娘もただ者では無いのか」と実感した。
すなわち、自分には吉良と由良に対抗する手が無い。
吉良の後ろで、一人情けない姿でこちらを伺っている男を見た。
「く、くそ…くそぉ!!」
女は悔しげとも憎しげとも、また、悲しげともとれる声を上げた。
あの男だけなら……男だけだったならば、と女は悔しさに身を打ちひしがれた。
そして、
「坊や…」
女のかろうじで残っていた片目から、涙が一筋流れた。
「い、今だ!奴を、奴を除霊してくれ!!」
女が意気消沈したのを見て、ずっと吉良の影に隠れていた男が立ち上がり、強気になる。
すると、由良が女に一歩一歩近づき、
「お夏さん…」
女に声をかけた。
その名を聞いて、女は反応せずには居られなかった。
大好きな両親から、頂いた…自分の名前。
「どうして、私の名を…」
ギョロりと由良を見上げると、由良の顔は、何とも爽やかな顔をしていた。
それは嘲笑うでもない、慈愛のような笑み。
何となく、目を見開いて居られず、女の目が細くなる。
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