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・・・・・・・・私は死んだのだろうか?
ウサギが喋ってる。
しかもかなりなめらかに。
服も着ている。赤い燕尾服に黒のシャツ、ズボンはチェックでなかなかオシャレだ。そして手にはウサギの身体より大きいのではないかと思うほどの大きな懐中時計を持っていた。
「メアリ・アン!聞いてるのかメアリ・アン!?」
ウサギがポカポカと脚を叩くのでその感触にあぁ、死んではないんだなと少しの安心感を覚える。
というかメアリ・アンって誰だ?
「私はメアリ・アンじゃないわ。ちゃんと名前が・・・」
しかし問題はここからだ。私はウサギを追いかけてはいない。
私が追いかけたのは騎士だ。
ウサギではない。
しかも私はアリスでもないし、アリスはもういるみたいだ。
「アリスから逃げてるの?」
私がそう言うとウサギは何を当たり前のことをと言うようなまん丸の目で私を睨みつける。
「何をいってるんだメアリ・アン!アリスから時間を守るのが僕らの役目だろう!さぁ武器をとるんだメアリ・アン!早くしないと彼女が来るぞ!」
ウサギは怯えたように周りを見て、懐中時計をしっかりと握りしめる。
どうやら私の知っているおとぎ話の世界とは違うようだ。
少なくとも私の知ってる話には武器を取ってアリスト戦うシーンはない。
私は目をつぶって考える。
これは現実なのだろうか?夢なのだろうか?
ウサギの声も、木々のざわめきも、これは真実なのだろうか?
しばらく悩んだ末、私は小さくため息を付く。考えても無駄だ。
私の意識は今ここにある。
これがまやかしであろうが真実であろうがここにいる私はこの空間の参加者なのだ。
私は無理矢理そう思いこむ。そうやって考えれば簡単だ。
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