8人が本棚に入れています
本棚に追加
「報酬にケチをつける気はないのだが……あの悪鬼が出るとは恐ろしいことだぞ」と、リッティッロは唇を震わせながら言った。
「ラミアと死ぬまでまぐわいしていたほうが偽りの快楽とはいえ、悪鬼に肉を貪り食われるより幾らかいいと思うほどだな」ベイルマンダスは親指の先を噛んだ。
「ガキの頃、悪さをすると悪鬼に食われるぞ、という脅しの決まり文句があったくらいだぜ」ベイルマンダスにむかってしゃべった。
「悪鬼に人は勝てん」諦めたように彼は言った。
「しかし、逃げるように王都を立ち去るのはおまえたちにふさわしくないぞ」王は二人を挑発するように言った。首をこくりと下げると、さらに言葉を続けた。
「つまらないことだと思わないかね……悪鬼を恐れたばかりにわたしの希望と期待を裏切るのか、おまえたちの祝福の光が輝く武勇はここで朽ち果てるのだぞ」
顎髭に触れていた指を腰にぶら下げた両刃の剣の柄になぞらせた。殺気溢れんばかりに目は血走り、冷静ではなかった。ふぅ、と息を吐き出す。リッティッロは唇を噛んでいた。血の味が舌に伝わり、ゆっくりと喉へくだるのを感じた。呪いの言葉を頭に浮かべる。
『おれの間違いだった、とんでもなく汚い奴だ、悪鬼の吐瀉物のような臭いがしやがるぞ。糞野郎が。お飾りの剣を抜いたところで無駄だぞ。てめえなんざ、いつでも殺せるんだ。』
最初のコメントを投稿しよう!