2576人が本棚に入れています
本棚に追加
勿論その機械はただのガラクタなのかも知れない。ただこの状況、金光の通信機が生きていれば会話は本部、即ち神道進に筒抜けなのだ。その状況は伊出も十分わかっている筈だ。
そのことに伊出のメリットは殆どない。金光と動くこと自体が逃亡中の彼らに不利なことである筈だ。
「それにセイバ君…春日セイバもこの横浜に来ているらしい」
そのことは最早金光にとって伊出の言葉が全て事実だと信じるには十分すぎる理由だった。
(因果か…)
金光は磐次を一瞥した。
(磐次の性格からして伊出に誘われたからといって、その施設のガキ共を見捨てるようなことはしまい。言動からしてガキ共は全員生きている。では何故ここにいるのか。答えは春日セイバらが横浜にいて、さっきのヴァンデルに襲われてしまう危険がまだ排除されていないということ)
Mプロジェクトの始動。
今世紀最大規模のヴァンデル災害。
ゼロの接近。
(なるほど、因果を束ねる者がここにいると確信するには十分すぎるな)
「金光頼む…一緒に来てくれ。俺は…あの町での出来事をこれ以上繰り返させたくない」
頭こそ下げなかったが、その声色から伊出が心のそこから金光に懇願しているのが伝わってきた。
「コー…“K”を…おえ…」
金光の壊れかけの通信機からノイズに混ざって声がしてきた。おそらく神道だろう。
最初のコメントを投稿しよう!