Mask

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「了解」 その声に金光は小さくそう返答した。 「ありがとう…よし、行くぞ」 そう言うと伊出は磐次に「後は任せた」とだけ言い残し、横浜港の入り口まで走り出していた。 「磐次…さっきの仮はまたあとで返す」 そう言うと金光も伊出の後を追って走り出していった。 「金光…伊出さん…」 磐次は力強く拳を握ると「行くぞ!!」と全体を激励した。それに対して全ての兵士が「おー!」と返した。その声はまるで雄たけびのようでもあったし、いつまた退いてしまうかもしれない自分自身を前へ前へと押し出すようでもあった。 (死ぬなよ…磐次、金光) その声を聞いて、伊出はそう感じた。それは息子たちのことを心から心配する父親の心境のようでもあったし、その成長を心から喜ぶ先生のような感情でもあった。 伊出にとって今はこれでよかった。上っ面だけでもいい。損得の感情や野望、押し寄せる恐怖を塗り潰すための勇気でもかまわない。何かを成し遂げようとする活力。それが今は必要なのだ。 (俺は…俺自身のケジメを付けに行く。あの日救おうとしたが、手をすり抜けて守れなかった。だから今度こそは必ず…!!) そして伊出と金光は市内へと消えていった。各々の因縁に決着を付けるために…
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