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それはそれでいいのだろが、とはこの場で誰もが感じていたことだった。
「不気味だね」
そう呟いたのは奈々だった。加帆達とビルに逃げ込んだ時と状況が似ていた為、この静かさには人一倍不安を感じていた。
「ここが都合よくあいつらの死角なのかな」
「それはどうだろう…あいつらこの辺りを隈なく調べてまわってるんだぜ。きっと便所の蓋の中まで調べているはずだよ」
“喩え方が下品なんだよ”とは誰が呟いたかわからなかったが、盛岡がわざわざ解説までしたこの事柄、一つ目がどうして自分達を見つけないのだろうかという疑問に、改めて全員が思考を張り巡らせていた。
本当にここは死角なのかも知れない。はたまた“この辺りは全滅させただろう”等と一つ目が思ってどこかに行ってしまったのか。
色々考える内に、全員が“もしかしたら…全滅したのかも”という推測するにはあまりにも自分達に都合のよい考えにたどり着いていた。
「いやいや、まさかねぇ」
皆の目があった瞬間、盛岡がそう呟いた。
「でも…さっきのだったら…」
奈々だった。彼女が言う“さっきの”とは伊出達がプロジェクトMと呼んでいたあの生物である。
(確かにあの怪物…怪人なら、ゼロみたいなあいつなら、あいつらを倒すのなんて朝飯前だろうけれども)
そんなSF映画みたいな展開がこの世であるのだろうか。考えれば考えるほど、セイバは自分達がおとぎの国にでも迷い込んでいるような錯覚に陥っていた。
それに仮に一つ目の敵だったとしても、自分達の味方だとはセイバ達は思えなかった。
むしろこの後、あの怪人の方が人間を蹂躙しそうだった。
「まぁここで無駄に頭を使っても疲れるだけだ。とりあえず安心だ、ってことでまた休憩を取ろう」
「そうだね、僕は寝なくていいから誰かまた寝るかい?」
「いいのか、直人?」
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