6706人が本棚に入れています
本棚に追加
俺は、白くて弱々しい手をそっと握った。
居なくなった紗希を見つけてからは、ずっと影から見つめていた。
誰も来ない卒業式。
誰も祝う事も無い、大学の入学式。
そして、毎年の様に彼女の年齢を祝う人も、もちろん誰も居なかった。
高校生の彼女を見つけた時、俺は絶句していた。
紗枝に似ている彼女の容姿もそうだが、真っ直ぐと見据える瞳は、ただ真っ黒でどこか暗い闇の様で……。
学校帰り、楽しそうに帰っている級友とは別に、いつも一人きりだった紗希。
.
最初のコメントを投稿しよう!