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お店に立って、商品を眺める紗希の表情は、今まで見た中で、一番穏やかで優しい顔をしていたからだ。
数年間見続けていて、初めて見た表情、それに紗希の好きな物を知り、俺はそれだけでも舞い上がっていた。
紗希に会いたい。
紗希と話したい。
俺の想いは、日々、膨れて行く一方だった。
その頃、親父の体調が悪化していき、母親から呼び出されていた。
『あの人が死ねば、紗希にも財産分与しなくてはいけなくなる』
母親の美幸は、紗枝や紗希を嫌っていた。
二人が居なくなった後、二人が居た部屋に置いてある家具や服などを全て燃やして捨ててしまったぐらいだ。
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