新たなテリトリーに向かって

4/29
前へ
/1301ページ
次へ
敦が産まれてすぐ、母の紗枝と泰希の婚姻が決まったという。 敦が物心着く頃、母の美幸に毎日の様に聞かされていたと言う。 『紗枝は悪魔だ。あの女が如月をダメにする。紗枝が居なければ、私達は幸せだったのに・・・』 それは、呪文の様で敦の心も蝕んでいったらしい。 しかし、母からそう教わっていたものの、紗枝の優しさに触れる度に疑問に思っていた。 そして、紗枝が私を産んで私を抱いている姿を見た時、衝撃を受けたとの事だった。 「あの時の、紗枝さんは本当に綺麗だった。あの優しい微笑み。あれはまさに聖母マリアの様だった。そして、紗希。お前を1度だけ抱かせてもらった時、小さくて壊れそうなお前が愛しいと思った」 敦は、泣きながらそう話した。 .
/1301ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6706人が本棚に入れています
本棚に追加