新たなテリトリーに向かって

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「紗希・・・・」 車に乗り込もうとした時、車椅子に乗った泰希が私の名前を呼んだ。 「行ってしまうのか・・・・」 その表情は、哀しげで今にも泣き崩れてしまいそうだった。 「ええ・・・」 私は無表情に短くそう答えると、泰希は目を伏せた。 私は泰希に背を向けて車に乗り込もうとした時、また泰希が口を開いた。 「恨んでいるか・・・」 震えた声でそう言った泰希の言葉は、朝の静寂の中で響いていいた。 「恨んで無いわ」 そう言うと、私は泰希の方を向いた。 .
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