新たなテリトリーに向かって

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俺は、それから仕事も手が着かず、マンションで過す日が続いた。 守は、俺の変わりに日夜、奔走していた。 俺は、そんな守に……、いや自分自身に甘えていた。 俺は、紗希の部屋で赤いソファーに座り一日ボーっと過す事が多かった。 紗希は、赤いこのソファーが好きだった。 彼女が仕事や大学のレポートを書く時、必ずここに座っていた事が今も鮮明に蘇る。 確かに座り心地もいいが、何故か紗希は赤い椅子にこだわっていた。 『なんだか、安心するんだよね。赤い椅子って・・・』 そう言うと、紗希はその赤いソファーに座って微笑んでいた。 「紗希・・・・」 俺は、小さな2人掛けのソファーに埋もれ、紗希の存在を確かめる様に体を小さく丸めて、自分の体を抱きしめていた。 .
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