新たなテリトリーに向かって

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「紗枝さんと、貴方です。社長が、ずっと持っていた物です」 私はその写真を受け取ると、そっと母の顔を指でなぞった。 私が知っている母の顔は、天井から吊り下がった母しかしらない。 その顔は、紫にうっ血していてむくみからなのか、パンパンに腫れている様にも見えた。 そして、苦しそうに歪んでいた。 「そう・・・・。これが母なの・・・・・」 私はそう言うと、母の顔を焼き付ける様にジッと見つめた。 そして息を吐くと白峰に言った。 「ねぇ?ライター持ってるでしょ?」 「え?ええ・・・・」 そう言うと、白峰はポケットからジッポのライターを取り出し、怪訝そうに私に渡した。 私は灰皿を寄せると、その写真に火を着けた。 .
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