新たなテリトリーに向かって

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「俺の妹、腎臓が悪くて移植しか助からなかったんです。日本国内に適合者が居なくて、アメリカの移植バンクにも登録しました。でも渡航費や手術費を合わせると、莫大な費用だった。社長は、その費用を何も言わず貸してくれたんです。でも・・・・・」 そう言うと、白峰は顔を俯かせた。 「亡くなったのね?」 私がそう言うと、小さく頷いた。 「俺も着いて行くつもりだった。でも、妹は頑なに拒否しました。『私も向こうで頑張るから、お兄ちゃんも頑張れって』と、ニッコリ笑って・・・。それが最後だった」 白峰はそう言うと、私を通して妹さんを見つめるかの様に、愛しいそうに目を細めていた。 .
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