新たなテリトリーに向かって

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圭と美里さんの問題は、もう今さらどうでも良い事だった。 如月の事、そしてこのお腹の子供の存在を知った圭が、私の事をどう思うか…。 もし、圭からこの子を降ろせと言われたら。 怖かった…。 怖かったから… 私は、圭の前から逃げてしまった。 私の頬には、冷たい涙が流れ落ちた。 でも、この冷たい涙が、私の心を冷たく凍らす事はもう二度と無い。 私は、母からの愛情、そして妙子や茂紀の親友としての愛情、そして何よりも、圭から与えられた優しい愛情が、私の心を温かく満たしてくれていたからだ。 体を震わせ涙をそっと流した私を乗せた飛行機は、まだ見ぬ新しいテリトリーへと向かって飛び立った。 .
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