突然の婚約者

2/22
6655人が本棚に入れています
本棚に追加
/1301ページ
次の日、バイト先から直接大学に行ったが、健司の姿を見る事は無かった。 夕方バイトに行くと、ヤスさんは 『まぁ、人生経験だな』 と一言言っただけで、何も聞かれなかった。 こういう所が、ヤスさんの良い所でもあり、お客様から好かれる所なのだと改めて実感した。 バイトが終わり、重い足取りでマンションに着くと、ゆっくりと玄関を開けた。 薄暗い部屋には、人の気配がまるで無く、少しホッとした。 リビングの電気も着けずベッドの方を見ると、昨夜のままベッドの上は乱雑になっていた。 「片付けろって言ったのに……。それより何この匂い!!」 私は、昨日の女の香水の匂いに顔をしかめると、慌ててベランダの窓を全開に開けた。 春のまだ肌寒い風が、私の体と心を包み込んでいた。 .
/1301ページ

最初のコメントを投稿しよう!