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一方、龍司と出会ったのは、高2の頃だった。
大沢の家が総合病院である為か、妬みというマイナスの感情を周囲の人間から嫌という程感じていたから、俺は周りと距離を置いていた。
そんな中でも近付いてくる者はいたが、大沢の家や、更にはもう関わりのない桐沢の家との接点を求めてくる奴等ばかりだったから、その事にも心底辟易していた。
しかし、龍司は違った。
あいつには、そんな下心がなかったのだ。
それに、俺が何度断ろうと、好意を伝えてきたし、冷たくあしらった所で、変わらずにずっと近くにいた。
始めは鬱陶しいと感じていたはずのそれは、心の奥底では孤独を感じていたらしい俺の、密かな救いになっていた。
…虫が良すぎる。
そんな事は分かっていた。
どうしたって俺は龍司の気持ちに応える訳には行かなかった。
それで距離を置こうと考えて、連絡を取らなかったりもしてみたが、俺の方が耐えられなかった。
だから、あの時は、思わず龍司に電話を掛けてしまったのだ。
龍司はマリーを亡くした俺の所にすぐに来てくれた。そして、フランスに行くように背中を押してくれた。
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