単の場合

7/8
前へ
/33ページ
次へ
応えようと思えば応えられる。 しかし、応える訳にはいかない。 そんな状況が長く続いていたが、樹と巴のお節介のお陰で、俺たちは恋人同志になった。 実は、今でもこれでいいのか、という思いがあったりする。 龍司は同性愛者ではないし、子どもが好きだ。 つまり、普通に結婚して家庭を築く事も可能であるはずなのだ。 それなのに、家庭を築く事など叶うはずのない、俺なんかの側にいて良いのだろうか。 もっと、別の幸せが有るのではないか…。 近くで龍司の優しさを感じれば感じる程、そんな思いは大きくなっていた。 しかし、俺には龍司を突き放す事は出来ない。 俺には龍司が必要なのだ。 龍司がいなければ、生きていけない程に…。 俺の側にいるだけで幸せだという龍司に、俺は一体どれだけの事をしてやれているのだろうか。 考えても、答えなど出る筈は無かった。
/33ページ

最初のコメントを投稿しよう!

194人が本棚に入れています
本棚に追加