龍司の場合

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今日はバレンタインデー。 俺は、単さんがいつもより早く目を覚ましたのを知っていた。 前に勤めていた店の仕込みのお陰で、俺には5時に目覚める癖が付いている。 それでも起床しないのは、単さんの朝の習慣を邪魔しないためだ。 後は、単さんが寝顔を見られる事を嫌っているから。 単さんは俺を含め人に寝顔を見られる事が凄く嫌なようで、それは俺に背中を向けて寝るくらいだから、相当嫌なんだろう。 それが分かっているのに先に起きるなんて出来ない。 寝る時は単さんを背中から抱き締める形で眠りに就くわけだが、結局お互いに寝返りを打つから、目が覚めた時に単さんの顔が目の前にあったりする。 大きな瞳を閉じた単さんは、睫毛の長さが際立って、それはそれは綺麗で、ずっと見ていたくなる。 そして、胸の奥が苦しくなるような愛しさを感じるのだ。 本当にこの人の事が好きなんだと、心から思う。 ずっと恋い焦がれて、やっと思いが通じた愛しい人…。 恋人になってくれた事が夢なんじゃないかと思う事は幾度となくあった。
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