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「単さん」
営業終了後のクレセント。俺は単さんを呼び止めて、カウンターに座ってもらって、バレンタインデーの贈り物…オニオングラタンスープを出した。
どうしてこれなのかと言うと、俺が初めて単さんのために作ったのがオニオングラタンスープで、その時に単さんは
「お前、料理の才能あるな」
と言ってくれたんだ。
俺はその言葉のお陰で料理人になる決意を固めた。
つまり、思い出の一品なのだ。
単さんは、少し戸惑ったようだったが、スプーンを取ると、一口を口に運んだ。
無言で目を閉じ、しばらくして、
「そう言えば、初めてお前が作ってくれたのもこれだったな。龍司…腕を上げたな。すごく美味い」
そう言って微笑んでくれた。
ああ、単さん、ちゃんと覚えていてくれたんだな。
しかし、目的はそこではない。
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