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「単さん、俺がこれを作った時、料理の才能があるって言ってくれましたよね。あの言葉のお陰で今があるんです。あの時だけじゃない。単さんはいつだって前に進む勇気をくれました。だから、今度は俺がお返しをする番だと思っているんですが…俺じゃあ力になれませんか?」
笑顔だった単さんの表情が、途端に悲しそうになる。
「…お前はいつもそうだ。俺の事ばかり考えて…。お前の今があるのはお前の努力の成果だ。俺は何もしていない」
単さんは俯いてしまった。
そして、ポツリと言う。
「龍司、別の未来だってあるんだ。俺でなくても…。俺は、お前を幸せにしてやれない…」
そんな事はないのに…。
単さんがそこにいてくれるだけでいいのに…。
もしかして、気持ちが離れてしまったのだろうか。
「単さん…」
「勘違いするなよ。お前を嫌いになった訳じゃない」
「ならば、どうして…」
「俺は、お前が子ども好きな事を知ってる。俺には樹がいるけど、このまま俺といたら子どもは望めないだろう」
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