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頭を殴られたような衝撃だった。
…単さんがそんな事を気にしていたなんて。
俺は、単さんの隣に座って、肩を抱いた。
「単さん…」
「俺には樹がいるのに、お前には…。龍司、お前には幸せでいて欲しいんだ。我慢して諦めるような事はして欲しくない…。後悔しないように生きて欲しい」
「単さん…いや、単。言ったじゃないですか。俺は、あなたの側にいられる事が一番幸せなんです。だから、我慢なんて何にもしてません。それに、樹は俺にとっても息子のようなもんです。名前付けたの俺ですしね。巴もいますし。何より、他の人と生きていくなんて考えられません」
「龍司…」
単さんの顔は、悲しそうなままだ。
「そんな顔しないで下さいよ。俺は、あなたの側にいられる事が、本当に幸せなんです。側にいられる事だけでも幸せなのに、愛してもらえるなんて奇跡のようです」
「龍司…」
前髪で隠れて、単さんの表情は見えないけど、
「ありがとう」
そんな声が聞こえた気がした。
「あ、そうだ」
俺に寄っ掛かっていた単さんが、突然立ち上がった。そのまま、休憩室に行ってしまう。
しばらくして、単さんは小さな紙袋を持って戻ってきた。
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