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「さあ、行きましょう」
運転はエミールさん。
実はエミールさん、日本の免許は取ったばかり。車にも初心者マークが付いている。
いつもは送り迎えは朔夜さんがしてくれているから、エミールさんの車に乗るのは初めてだ。
ゆっくり発進した車は安全運転で、近くのスーパーに到着した。
「必要な物は、板チョコと、ココアパウダーと、あとはクルミですね。他は家にある物で大丈夫です」
エミールさんが教えてくれた通りの材料を探して、二人で製菓材料の所をさ迷っていると、さすがにバレンタインデー前日とあって、様々な年代の女性が沢山いた。
エミールさんは背も高くて、顔立ちも綺麗だから、そんな彼女たちからの注目の的だ。
それが僕はと言えば、すんごく平凡だから、何だかちょっと切ない。
エミールさんは視線を気にする様子もなく、手際よく材料を集めていく。
「巴様。板チョコは2枚必要なのですが、どうなさいますか? 組み合わせで甘さが決まります」
ふと、エミールさんが足を止めて指差した先には、ミルクとビターの板チョコ。
う~ん。間を取ってみようかな。
「ん~、1枚ずつでも大丈夫ですか?」
「それ、いいですね」
エミールさんは笑顔で賛成してくれた。
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