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「矢島!勝負しろ!」
またか。
そんな口にはしない短い単語と一緒に矢島はタバコの煙を吐き出した。
その代わり、呆れた、余程興味のない視線が1年坊主に矢島は向けた。
確か名前は、堀北市江。
イヤでも覚えた。
毎回毎回、同じ事ばかり口にして。しかも呼び捨て。
学校に行った日はほぼ毎回。
他所で顔を合わせたなら数十メートル先からも吹っ飛んできて、お決まりの言葉。
「お前、それしか言葉知らねーのか?」
思わず口から出ていた。
「勝負、しろ!」
言葉を知らないのではなく、矢島にはそれだけで十分。そんな口調。
堀北。
1年を2ヶ月かけて制覇した男だ。
もちろん2年という順番があるのだが、なぜか3年の自分に絡んでくる。
ほとほと迷惑だと、矢島は首の後ろを掻いた。
何でオレなのだと聞けば、高校一強い男、相馬に挑むには2番手の矢島を倒すのが手っ取り早いだとか。
何か違う気もするが。
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