12人が本棚に入れています
本棚に追加
「…んで?」
シフォンは思わず、隣に座る 元・同級生をジトリと睨みつけた。
「ん? や、だから…オーナーがいつもの気まぐれで
「今年の海の家は、自家発電で行こー!!」
とか言い出して、飯田の旦那達は自転車漕がなきゃイケなくなって人手がね…?」
もう一度説明を求める意味の「で?」では無かったが、
この身長差だと、下から睨めばも見上げるも、相手からすれば変わらないのかもしれない。
何も解っていない顔で首を傾げられ、思わず溜め息が出る。
詞が鈍いのは今に始まった事では無いけれど…
自分だって少し前まで学生だったんだから、
よりにもよって女子高の校門で待ち伏せとかそんな。
騒ぎになるとか、その後噂になるんじゃないかとか……
考えないか、詞だし。
「バイトかぁ…バイトねー。
考えとくのよー、友達にも声掛けてみるわ?」
こんなのに恋をするとは、あの娘は大変そうだ。
やれやれ、と肩を竦めて頭を振ると、
隣から腕が伸びて来て髪の乱れを直される。
「………」
こういう事を普通にする。
スキンシップ過多気味の姫島家だが、中でも詞は酷い。
あの娘にも、バイトの勧誘ついでに撫でたり何だりして来たのだろう。
再び息を吐いて、
「ホント、苦労するのよー」と呟くと、
「本当、飯田の旦那達は大変だぁね」
と、隣からも溜め息。
いやいやいや。アナタのコトよ?
もはや溜め息も出なかった。
最初のコメントを投稿しよう!