[詞] 彼とあの子の夏のコト [ひわ]

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  「…んで?」 シフォンは思わず、隣に座る 元・同級生をジトリと睨みつけた。 「ん? や、だから…オーナーがいつもの気まぐれで 「今年の海の家は、自家発電で行こー!!」 とか言い出して、飯田の旦那達は自転車漕がなきゃイケなくなって人手がね…?」  もう一度説明を求める意味の「で?」では無かったが、 この身長差だと、下から睨めばも見上げるも、相手からすれば変わらないのかもしれない。 何も解っていない顔で首を傾げられ、思わず溜め息が出る。  詞が鈍いのは今に始まった事では無いけれど… 自分だって少し前まで学生だったんだから、 よりにもよって女子高の校門で待ち伏せとかそんな。 騒ぎになるとか、その後噂になるんじゃないかとか…… 考えないか、詞だし。 「バイトかぁ…バイトねー。 考えとくのよー、友達にも声掛けてみるわ?」 こんなのに恋をするとは、あの娘は大変そうだ。 やれやれ、と肩を竦めて頭を振ると、 隣から腕が伸びて来て髪の乱れを直される。 「………」 こういう事を普通にする。 スキンシップ過多気味の姫島家だが、中でも詞は酷い。 あの娘にも、バイトの勧誘ついでに撫でたり何だりして来たのだろう。 再び息を吐いて、 「ホント、苦労するのよー」と呟くと、 「本当、飯田の旦那達は大変だぁね」 と、隣からも溜め息。 いやいやいや。アナタのコトよ? もはや溜め息も出なかった。  
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