永遠の午に咲いた薔薇

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  「〈白薔薇〉」  私も同じだよ。しろばら。  背中から抱きしめると、やはり甘い砂糖菓子のにおいがして、ガブリエルの胸は衝き上げられた。長い間息ができなかった。激しい感情はときとして人を殺せるほどの力を持てるのだと、彼女はそのとき初めて知ったのだった。  たとえこのまま死んでしまったって、かまわないけれど。 「なにが同じだというの」  ガブリエルの腕の中で〈白薔薇〉がつぶやいた。語尾は震えていた。 「〈白薔薇〉」  穏やかに呼びかけるガブリエルを、〈白薔薇〉はキッと振り返る。その目はしかし刹那、おののいたような色を浮かべてそこに立ち尽くした。彼女を迎えるガブリエルの眼差しが、あまりにも優しかったからかもしれない。 「〈白薔薇〉」 「やめて!」  ガブリエルの腕と眼差しを振り払い、身をよじって、〈白薔薇〉は抱擁から抜け出した。壁際まで逃げるように走り、振り向いた少女の目は涙で濡れていた。胸元で金の時計が揺れる。 「わたしと貴女は違う。貴女に、わたしのことがわかるはずがない。そうよ。わかるはずなんてないの。なのに、なのに貴女はどうしてそんなことを」  同じだよ。  ガブリエルは落ち着いた声で〈白薔薇〉を遮った。 「私も同じなんだよ。いとおしくて、にくらしいよ。図面を引いているときも、部品を削り出すときも、磨いて、螺子(ビス)を止めて、組み立てて――こんなものが無ければ、こんなものさえ無くなってしまえば、私が父さんを憎まなくてすむんだって、自分の力や才能に絶望しなくてすむんだって思うとね、ときどき、全部壊してしまいたくなる。ぐちゃぐちゃにして、全部なかったことにしたくなるよ。だけどさ、だけどやっぱり、私は好きなんだよ。どうしようもなく、好きなんだよ」 「そんなこと――それと、私のことは違う」 〈白薔薇〉は必死で首を振る。  
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