永遠の午に咲いた薔薇

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  「そうかな」  ガブリエルは立ち上がり、〈白薔薇〉のもとへ歩き出した。ガブリエルが近づくのを見て、少女はおびえたような表情を浮かべたが、ガブリエルは構わずに微笑みかけた。しろばら。わかったんだよ、しろばら。 「嫉妬したって、憎んだっていいんだよ。それも私で、それもあなたなんだよ。〈白薔薇〉。苦しければ泣いたっていい。腹を立てれば怒ったっていいんだ」  だってね、しろばら。あなたが泣いたとき、そうしていま、そんなふうに怒ったとき、恨んだとき、憎んだとき、私はそれをいとおしいと思ったんだよ。しろばら。美しいものだけじゃないんだよ。あなたの中の醜いものだって、全部、全部いとおしかったんだよ。くるしいくらいに、あなただったんだよ。 「……でも、だけどわたしと貴女は違う。あなたはにんげんで、わたしはそうじゃない。わたしは、生きることも死ぬことも、なにひとつできないんだから。わたしの時は、永遠に止まったままなんだから」 「わかってないね、あなたは」 「なにが――」  続く言葉は抱擁によって遮られた。きつく、熱い、抱擁。細い首、薄くやわらかな背、先ほど暴れたせいで露になった白い肩口。すべてを。ガブリエルは〈白薔薇〉を壁と自分の体とに押しつけ、荒々しく、すべてを奪おうとするかのような、飢えた抱擁をする。〈白薔薇〉の目が戸惑いと驚きを映して揺れる。 「……痛い。いたいわ、ガブリエル。ねえ」  あなたの時計は時を刻んでいるでしょう、しろばら。こんなにも温かいあなたは、たしかに時を刻んでいるでしょう。生きているでしょう。終わりがなくたって、始まりがなくたって、いまあなたは私の腕の中で、たしかに生きているでしょう。しろばら。  ガブリエルはそこでふっと力を緩め、少女と向き直った。ごめんねしろばら。〈白薔薇〉は泣いてこそいなかったが、息をかすかに荒げて、頬を上気させていた。すう、と息をつく。彼女は伏せていた目をゆっくりと上げ、何かを乞うようにガブリエルを見つめた。  
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